今回はまじめな話題であります。「半導体を制するものが世界を制する」とよく言われます。ブログタイトルはこれをもじって言い替えたものです。米中冷戦の中、米のペプシ下院議長の台湾への電撃訪問で中国が反発、台湾を封鎖する形で行った軍事演習はご存知の通り。アメリカと日本は台湾とは友好国であり協力関係にあります。台湾はアメリカにとってアジア地域の前線基地であり、中国が台湾を統一したら、アメリカや日本を含むアジア地域諸国の安全保障は脅かされます。
ロシアによるウクライナ侵攻や北朝鮮のミサイル実験などの報道から、中国による台湾有事も決して他人事ではありません。アメリカや日本が台湾を支援するのは、アジア地域の前線基地だけではなく、他にも大きな国家戦略があるからです。
昨夜9時、NHKスペシャル「半導体・大競争時代」という放送番組があり興味深く拝見しました。今週と来週2回に分けての放送されます。昨夜は1回目の放送で、安全保障上 敵を圧倒するためにも、半導体の覇権を獲得することが、国家の命運にもつながる重大事項であることを紹介しています。
今や半導体は家電・自動車・航空機・通信機器・AI(人工知能)などいたるところに利用されおり、次世代の産業を支えるさまざまな技術に活用されています。冒頭の写真は、私がバッテリ交換のため、iPhone6を分解したものです。基板には約5mm~10mm四方の無数の端子のついた板状のものがあちこちに埋め込まれています。
板状のものは、LSI(Large Scale Integration)と言われる大集積回路であります。LSIはトランジスタやダイオード、受動素子など集積させて複雑な機能を実現する電子回路部品です。これら回路部品は半導体(シリコンなど)で構成されています。CPU(頭脳)はじめカメラ(イメージセンサー)の画像処理、音声認識などさまざまな半導体が使われています。
ここで登場するのがナノテクノロジーです。主に100ナノメートル以下の微細なスケールの物質(半導体など)を操る技術のことです。ナノとは正しくはナノメートル(nm)のことを表しており、長さの単位です。1nm=10−9 m 、つまり10億分の1メートルです。
・1m=1,000mm (1000ミリメートル) 1mm=10−3 m
・1m=1,000,000μm (100万マイクロメートル) 1μm=10−6 m
・1m=1,000,000,000nm (10億ナノメートル) 1nm=10−9 m
細菌でさえ100万分の1メートルなので、ナノがどれだけ小さいものかが分かります。たとえ話で地球の大きさを1とすると、10億分の1の大きさはビー玉くらいになるそうです。
半導体は回路巾を細くするほど性能アップに繋がります。回路を細くすればデータのやりとりする回路を増やすことができ処理能力が上がります。日本の半導体製技術は40ナノが限界で家電などに使われています。2ナノ半導体はAI・自動運転などに使われており、アメリカのIBMがすでに開発済です。台湾の先端半導体(14ナノ以下)の供給量は世界シェア70%を占めています。
製造しているのはTSMC(1987年設立)という会社で時価総額54兆円、トヨタの約2倍もあります。アップルのパソコンやスマホで使う4ナノ半導体製造をTSMCで受託・量産しており、アップルは最大の顧客でもあります。中国のスマホ大手からも製造を請け負っています。台湾の半導体製造供給は、米・中にとって不可欠な存在になのです。
アメリカは半導体の設計のみで海外に製造依頼。中国は半導体製造国ですが先端半導体は製造不可。台湾は先端半導体製造で世界シェア70%。アメリカは中国に対抗するためアリゾナに巨大なTSMCの製造工場を誘致・建設中であります。来年から4ナノ半導体の量産が可能に。日本も熊本に同じくTSMCの工場を誘致・建設することになりました。
プーチンのような独裁者がウクライナを侵攻したように、台湾は中国の一部であり統一のための武力行使もよさないという考えももっている習近平主席は台湾侵攻やりかねません。アメリカは台湾を守ると言っていますので、台湾を巡って米中がヒートアップし対立しているという訳です。
台湾がもし中国から武力行使を受けるようなことがあれば、中国はもちろんのこと世界に重大な危機に陥れることになります。現時点では台湾の存在が他にとって代わられることはありません。アメリカや中国は日本にとっても大事なマーケットであり、米・中・日が空中分解になりかねない台湾有事のないことを願うばかりです。
余談ですが、「2022 FIFAワールドカップ」で、「三笘の1ミリ」と言われた軌跡みたいな判定は、ボールに内臓された半導体チップによるVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)で行われました。スタジアムに12台設置するトラッキングカメラの情報とボール内蔵チップによってオフサイドなどを正確に判定するシステムですが、半導体技術はスポーツ界にも応用されています。