日別アーカイブ: 2023年9月16日

原発処理水トリチウムの海洋放出 日本より多い中国が何故反対するのか


出典:資源エネルギー庁(経済産業省)

8月24日より、東京電力福島第一原子力発電所(福島第一原発)で発生している「ALPS処理水」の海洋放出が開始されました。放出は今後30年も続くそうです。国内(風評被害など)のみならず中国や韓国など海洋放出に反対しています。廃炉作業も完了までに30~40年かかる見込みだそうですが、気が遠くなりますね。ウクライナ戦争で原発攻撃も想定している話を聞くと、テロ・天災による原発事故の怖さが理解できます。

福島第一原発では、原子炉内に残る、原発事故で溶けて固まった核燃料「デブリ」を冷やすため、1日に発生する汚染水は94〜150トンにものぼります。1日100トンと仮定すると、30年で約100万トン増えます。この水は、高い濃度の放射性物質を含んだ「汚染水」となるため、多核種除去設備「ALPS(アルプス)」の設備にかけて、放射線物質を分離させた水を、政府や電力会社は「処理水」と呼んでいます。

処理水の海洋放出は、放射性物質(測定・評価対象核種29核種トリチウム、ALPS除去対象核種のうち測定・評価対象核種に含まれない39核種合計69核種)を希釈放出前に測定し、トリチウム以外の放射性物質の濃度が、安全基準を完全に下回るまで浄化されていることを確認します。

しかしながら、1000基あるタンクに貯蔵された「ALPS処理水」には、ALPSで除去できないトリチウムや炭素14が残されていたり、除去することになっているストロンチウム90、ヨウ素129、ルテニウム106、テクネチウム99なども基準値を超えて残留しているということが、後にメディアのスクープ記事で発覚しました。

スクープしたのは共同通信社(2018年8月)でしたが、このスクープを受けて、東京電力は従来説明してきた「トリチウム以外の放射性物質は除去し基準を下回る」という内容を修正し、「二次処理して基準以下にする」という計画に変更しました。

トリチウム以外に含まれている規制基準以上の放射性物質は、規制基準以下になるまで繰り返し浄化処理を実施しても、トリチウムだけは取り除くことはできません。そこでトリチウムだけは、海水で100倍以上薄めて、人体に害を与えない状態で、海洋放出するという訳であります。

またデータの客観性を確保するため、ALPS処理水に含まれる放射線物質の濃度について、東京電力に加え、国やIAEA(国際原子力機関)が、第三者として独立した測定を実施します。

トリチウムの濃度の基準は、運転中の原発が海に放出する場合に適用する国の基準の40分の1、WHOが示す飲料水の基準の7分の1としています。今回の処理水放出の発表をめぐっては、東京電力はトリチウムについて「主に水として存在し、自然界や水道水のほか、私たちの体内にも存在する」という健康上全く問題ないと説明。

国は、ALPSで除去できないトリチウムの年間放出量は、海外の多くの原子力関連施設より低水準と伝えています。経済産業省のサイトでは、処理後のトリチウムの年間放出量は22兆ベクレル未満の予定と記載。韓国の古里原発は約49兆ベクレル、中国の陽江原発は約112兆ベクレルと記している(2021年のデータ)。

これらデータから、各国から反対される筋合いはないと思いますが、特に中国は、台湾有事や半導体規制などの絡みもあり、日本に対して怨念があるのかも。因縁をつけて報復処置として、海産物の輸入停止などけん制しているとしか考えられません。ただネット上で見かけた、以下の指摘に対しては、理解できる面もあります。

*排出される処理水が、通常の稼働下で排出される冷却水とは質が異なる。
*国内外の反対にもかかわらず、近隣諸国や国際社会と十分な協議もなく、一方的に処分を決定した事。

過去の事例から、共同通信のスクープの一件からも、国や東京電力は真実をどこまで語っているのか、隠し事はないのか、本当に信じていいのか、個人的には懐疑的な念は拭いきれません。